Nhạc nềnTaishoRoman_Theme2

無刃の制裁

Audio truyện
Chưa có audio. Bấm để tự tạo audio cho tập này.

深夜、吹き荒れていた大砂嵐は落日鎮の厚い泥壁に遮られ、わずかにその勢いを減じていた。しかし、細かな赤砂を孕んだ冷たい夜風は、荒れ果てた廃寺の隙間から容赦なく吹き込み、石畳の上に横たわる蕭落行の肌を刺した。


 落行は暗闇の中で静かに目を開けた。胸元に手を当てると、衣服の裏で黒い日輪の痣――「残陽の寿命刻印」が、熱を失った炭のように冷たく沈黙している。密売人の雷三から手に入れた「氷心草」の薬効は確かに体内の熱毒を鎮めていたが、その代償はあまりにも冷酷だった。


「……動かないな」


 落行は包帯に包まれた右手の指先を見つめた。親指と人差し指は何とか動くものの、薬指と小指はまるで他人の肉塊を貼り付けられたかのように冷たく、感覚が消失している。前夜、馬賊の捜索網を逃れるために「亀息功」を限界まで維持した代償だった。逃げ場を失った熱毒が右腕の経絡に滞留し、その繊細な神経を焼き焦がしたのだ。


 背中には、養父の形見である錆びた無銘の鉄剣が静かに佇んでいる。抜刀すれば、残る寿命は確実に縮む。残り十二回の抜刀――その一回たりとも、このような辺境の雑魚相手に無駄に消費するわけにはいかなかった。


 傍らでは、昼間に助けた浮浪児の少女・小泥が、寒さに震えながら丸まって眠っている。落行は声もかけず、ただ静かに自らの内力を巡らせ、右腕の凍りついた経絡を少しでも通そうと試みた。だが、内力を動かそうとするたびに、心臓の奥がチリチリと焼けるように痛む。焦燥が泥のように胸の底に沈殿していった。


 その静寂を破ったのは、廃寺の外から響いてきた、獣のような怒号と下卑た笑い声だった。


「おい! この辺りに隠れているガキども、全員引きずり出せ! 砂金でも青塩でも、持っているものはすべて差し出せ!」


 松明の赤い光が、廃寺の崩れかけた障子窓を不気味に赤く染める。落行の鋭い聴覚が、複数の荒い足音と、引きずられる人間の悲鳴を捉えた。


「頼む、許してくれ……! もう差し出せる砂金などないのだ……!」


 聞き覚えのあるかすれた声。それは、落日鎮の貧民区で暮らす温厚な老女、宋大媽の声だった。幼い頃、行き倒れそうになっていた落行に、自らの乏しい食事から硬い黒パンを分け与えてくれた、祖母のような存在。


「うるせえ、ババア! 命が惜しければ、隠し持っている砂金の場所を吐け!」


 肉を叩く鈍い音が響き、宋大媽の短い悲鳴が砂風に消えた。襲撃してきたのは、鉄血沙門の傘下にある小規模な馬賊集団の頭「飢狼」とその部下たちだった。本隊が落行を捜索している混乱に乗じ、周辺の村々や廃墟を襲って略奪を働いているのだ。


 落行の瞳に、極寒の氷のような殺気が宿った。心臓が跳ね、体内の「熱毒臨界点」がわずかに上昇する。右腕の革包帯の下で、経絡が不気味に脈打ち始めた。


「小泥、そこから動くな。本尊の空洞の中に隠れていろ」


 落行は囁くような声で小泥に命じた。小泥は恐怖に目を見張りながらも、小さく頷き、崩れかけた泥仏の背後へと身を潜めた。


 落行は立ち上がり、背中の錆びた鉄剣の柄に手を伸ばしかけた――だが、その手を止めた。右手の指先はしびれ、剣を握る確かな感覚がない。そして何より、ここで抜刀すれば、蠍三の仕掛けた罠に自ら飛び込むことになる。


(抜いてはならない。抜かずに、すべてを終わらせる)


 落行は鉄剣を鞘に収めたまま、左手でその中程を握り締めた。そして、影のように音もなく廃寺の門口へと歩み出た。


 廃寺の前庭では、十数人の馬賊たちが宋大媽を取り囲んでいた。飢狼と呼ばれる痩せこけた男が、血の付いた大刀を宋大媽の首筋に突きつけ、下卑た笑みを浮かべている。


「その手を放せ」


 闇の中から響いた冷徹な声に、馬賊たちが一斉に松明を向けた。そこには、灰色の布衣を纏い、右腕に黒い包帯を巻いた少年が立っていた。


「あァ? 何だこのガキは。死にたい奴から順に並べって言っただろ!」


 飢狼が顎をしゃくると、三人の部下が剛刀を構えて落行へと突進してきた。ぬかるんだ砂地を蹴る足音が、落行の耳に正確な距離を伝えてくる。


 一人目の馬賊が、落行の脳天をめがけて剛刀を振り下ろした。落行は一歩も退かず、相手の刃が鼻先をかすめる一瞬前に、左手を鋭く突き出した。放たれたのは、剣を抜かずに鞘のまま敵の攻撃を叩き落とす高速の防御技術「風斬り」だった。


 キィィン!


 鋭い金属音が夜の廃寺に響き渡る。落行の放った鉄鞘が、馬賊の剛刀の平を正確に叩き、その軌道を物理的に弾き落とした。それだけにとどまらず、落行は手首を返し、鉄鞘の鋭い角を馬賊の手首の経穴へと叩き込んだ。


「ゴキリ」という鈍い骨砕音が響き、馬賊は悲鳴を上げて刀を落とした。手首の骨を物理的に粉砕されたのだ。


「この野郎!」


 二人目の馬賊が、重量のある太い鉄棒を落行の脇腹に向けて横に薙ぎ払ってきた。狭い前庭では、回避するスペースが極めて限られている。落行は「砂海歩法」で足元を滑らせようとしたが、左足が泥濘に一瞬だけ取られ、踏み込みが遅れた。


(避けられない――ならば、受ける)


 落行は呼吸を深く吐き出し、内力を一瞬にして下半身へと集中させた。大地に大樹が深く根を張るように、自らの体重を物理的に増加させて固定する技術「千斤墜」である。


 ドゴォン!


 鉄棒が落行の右肩を直撃した。凄まじい衝撃が骨を軋ませ、肉を震わせる。通常の武芸者であれば肩甲骨を粉砕されて吹き飛ばされているところだったが、落行は千斤墜によってその場に物理的に留まり、打撃の威力を肉体で吸収した。右腕の特定の経穴を圧迫する「痛覚遮断」の技術により、激痛は脳に届く前に遮断され、彼の表情は氷のように冷たいままだった。


 しかし、肉体へのダメージは確実に蓄積していた。衝撃により、肺の奥から熱い血の味がせり上がってくる。


「死ね!」


 三人目の馬賊が、その隙を突いて落行の首を狙って剛刀を真横に薙ぎ払ってきた。落行は左手で鉄鞘を掲げ、剛刀の刃先を受け止めた。だが、彼は力で押し返さなかった。養父・蕭長風から授けられた戦闘哲学「借力打力の理論」を起動したのだ。


 強風は太木を折るが、柳の枝は受け流す。


 落行は鞘をわずかに斜めに傾け、三人目の馬賊が放った剛刀の威力を、そのまま鞘の表面を滑らせるようにして右側へと受け流した。剛刀の刃は火花を散らしながら滑り、その先で鉄棒を構え直していた二人目の馬賊の喉元へと吸い込まれていった。


「ガハッ……!」


 二人目の馬賊は、仲間の放った剛刀に喉を物理的に切り裂かれ、血を噴き出してその場に崩れ落ちた。完璧な同士討ちだった。三人目の馬賊は、自らの手が犯した惨劇に目を見張り、恐怖で動きを止めた。


「化け物め……!」


 飢狼が顔を引きつらせ、宋大媽を放り出して自ら大刀を構えて飛び出してきた。彼の放つ大刀は、周囲の砂塵を巻き込みながら、隙のない連続の斬撃となって落行を襲う。落行は左手一本で鉄鞘を操り、飢狼の荒々しい打撃のベクトルを「借力打力」で次々と逸らしていった。右へ、左へ、大刀の剛力が空を切り、廃寺の石柱を物理的に削り取っていく。


 十数手の交差の後、飢狼の呼吸が大きく乱れ、大刀を振り上げた一瞬の隙が生じた。落行はその隙を見逃さなかった。「砂走り」の足さばきで泥濘を滑るように間合いを詰め、左手の鉄鞘を飢狼の喉元に向けて真っ直ぐに突き出した。


 ドスッ!


 鉄鞘の先端が、飢狼の喉仏を正確に撃ち抜いた。飢狼は白目を剥き、喉を鳴らしながら泥の上に倒れ込み、二度と動かなくなった。頭を失った残りの馬賊たちは、恐怖に駆られて松明を投げ捨て、夜闇の中へと這うようにして逃げ去っていった。


「落行……お前、本当に、長風殿の……」


 宋大媽が震える声で落行を見上げた。落行は何も答えず、ただ静かに彼女を助け起こそうと左手を伸ばした。だが、その指先が宋大媽の肩に触れる前に、彼の肉体の中で恐るべき異変が起きた。


 ゴフッ――!


 落行の口から、真っ黒な血が激しく噴き出した。石畳の上に落ちた血は、尋常ならざる高熱を帯びており、かすかにジュッと音を立てて蒸気を上げた。


 戦闘中の激しい肉体駆動と、千斤墜による衝撃の物理吸収、そして怒りによる心拍数の上昇。それらすべての要因が重なり、体内で一時的に鎮まっていた熱毒が、恐るべき勢いで再活性化したのだ。体内の気の流れが暴走し、経絡を内側から焼き裂きながら心臓へと逆流していく。体内の「熱毒臨界点」を、肉体が完全に突破した瞬間だった。


「あ、が……!」


 視界が真っ赤に染まり、全身の皮膚が沸騰するような激痛が落行を襲った。遮断されていたはずの右肩の打撃痛も、熱毒の暴走によって一気に解き放たれ、数倍の衝撃となって脳を直撃する。


「お兄ちゃん!」


 本尊の裏から飛び出してきた小泥の悲鳴が、遠くで響く。落行は錆びた鉄剣を抱きしめたまま、冷たい泥の中に崩れ落ち、意識を暗黒の深淵へと失っていった。

HẾT CHƯƠNG

Chưa có bình luận nào. Hãy là người đầu tiên!